この記事は定期更新ゲームアドベントカレンダー4日用に書き下ろした記事となります。
 また今回、文章の雰囲気の都合上、二人称を「お前」にしており、一部失礼な物言いもございますが、演出としてお楽しみ頂ければと思います。







※これは定期更新ゲームの画像ではありません。



スプラトゥーンから紐解く定期更新ゲーム

目次


 

・定期更新ゲームの話




 やあ、初めまして。広漠とした電子の大地へようこそ。
 お前がどういう経緯でこの記事に辿り着いたか、聞く必要はないだろう。言うなれば、俺とお前は定期更新ゲームに興じる同志であり、仲間であり、好敵手であり――時には敵同士(ドイツとソ連、イバラシティとアンジニティさながらに)でもあるというわけだ。
 勿論、今この場で一戦おっ始まるつもりは毛頭ない。ひと先ずは其処の椅子に腰をおろし、コーヒーでも飲んでリラックスして欲しい。

(マグカップに淹れたコーヒーを薫らせながら、あなたに手渡す)

 中には「初めましてではない」奴らもいるだろうな。昨年のアドベントカレンダーで俺は『独ソ戦から紐解く定期更新ゲーム』という記事を書いたが、そいつに目を通した奴らだ。……ふっ、そういう連中は、一目見れば分かる。
 あの記事を読んだお前は、勇敢なドイツ国防軍も顔負けの “屈強な肉体と不屈の精神” を備えている。その双眸には凛とした光を湛え、背筋は天を突くように真っすぐ伸びている。胸元には騎士鉄十字章が堂と飾られていることだろう。

(無言で『やったな』という賞賛の目配せをあなたに送る。一流の戦士に送る、最大級の賛辞だ)

 俺の自己紹介なんかは前回の記事を読んで頂ければそれで事足るだろうし、別に読まなくても良い。俺の素性なんかよりも、これからする定期更新ゲームの話の方が余程有意義だからな。


 さて、お前は相も変わらず定期更新ゲームに現を抜かしていることだろう。この記事に目を通しているのが何よりの証左さ。一度定期更新ゲームに憑りつかれた人間は、そう簡単にはこの界隈から足を洗えない……。それこそ小指の一本や二本じゃ足りねェだろう。俺たちは一生、このスラムで命や情緒のやり取りを続けることになる。




※実際にはものの10秒で足を洗えるようになっているから安心して欲しい。

 最近の定期ゲーはどうだ? 騒乱イバラシティはまだ続いているし、Story of Lost ArtifactやStella Boardの本稼働ももう直ぐだ。年末にはフタハナやぽれんだってやって来る。新しいキャラクターを作ったりクリトラでロールをしたりと、師走に相応しい、慌ただしい日常を送っていることだろう。
 充実していて、結構なことじゃないか。実際俺も似たようなモンだ。幾ら時間があっても足りやしない。


 今だからこそ言うが、定期更新ゲームは本当に素晴らしい。付随するチャットシステムがRPの土壌になるのもそうだが、初めて定期ゲーの戦闘に触れた時は衝撃を受けたし、目から鱗だった。
 ステータスを割り振り、アイテムを装備させ、スキルとその発生条件を予め決めておく。余力があれば台詞や演出を凝る。これだけで、実際の戦闘でキャラはひとりでに動き、戦い、個性をみせる。
 味方が少しでも傷つけばすぐに回復するあの子はきっと心優しいのだろう。開幕から敵に切り込んでいくアイツは血気盛んだし、先ずはバフから始めるあの人は冷静な戦略眼を持っている――。
 想像は幾らでも膨らませられる。特に俺は、戦闘開始時に敵と掛け合いをする奴らが大好きだ。七海では海賊や海賊狩りがクールな掛け合いを幾つもみせてくれた。繰り返しログを読むほどには胸が高鳴ったよ。

 実際に戦闘が始まってしまえばプレイヤーは一切介入できない。定期ゲーのいいところだ。戦闘ログを眺めるとき、俺たちは等しく、それこそ “我が子を見守る” ような気分でスクロールバーを動かしていることだろう。キャラクターがダメージを受けて傷付けば固唾を飲むし、活躍をすれば “よくやった!” と叫びたくなる。プレイヤーが一切干渉ができないからこそ、キャラクターたちの織り成すドラマは唯一無二のものになっていく――。

 だが俺は時折思う。「俺自身も、この血が滾るような戦闘に参加したい」と。人権(自分自身をキャラ化するという概念。これに手を染めるのは定期ゲー界隈の中でも一部の猛者たちだけある……)とかそういう話ではなく、な……。
 そしてその願望を叶えるゲームがある。次はその話をしようと思う。




 

・自分自身が定期ゲーの戦闘を味わえるゲームがある




 先ほども述べた通り、定期更新ゲームでは、ロールや演出に無限に力を注ぐことが出来るし、戦闘設定を考えるにもデータ収集や思考が必要である。だが、俺たちが関われるのはそこまでだ。そこからはキャラクターの舞台。俺たちは物語の見届け人にはなれても、役者にはなれない。

 だが、俺たちが役者になれるゲームがあるとすればどうだろう? しかもそのゲームは、定期更新ゲームの要素も多分に含まれている……。
 ……言いたいことがよく分からないって? 大丈夫、これから説明を――

  ――危ないッ、潜れ!!!

器用極チャージャーから放たれた一撃が、先ほどまでキミが座っていた空間を貫く。)



※一瞬で相手の周囲の大気ごとインクで貫く。相手は死ぬ。


 ふう……間一髪だったな。
 あと少し潜るのが遅れれば、お前はインクを撒き散らしながらキルカウントを1つ献上していただろう。
 うん? 見覚えのある展開だって? 気のせいさ。それか、再更新でもされたんじゃないかな。




※定期更新ゲームにはツキモノである再更新。GMの苦労が偲ばれる。感謝の気持ちを忘れないようにしよう。


……さて、お前は今の自身の状態を、正しく自覚しなければならないだろう。

(そう云って懐から鏡を取り出すと、あなたに向けて差し出した。鈍色の光を放つソレには、のっぺりと地面を這うイカ状態のあなたが映っている)

 驚いただろう。お前には今、『肉体変調:イカ化』が付与されている。
 何故、そんな肉体変調が付加されているんだ、とでも言いたげな顔だな。それは、これからお前にオススメするゲームと関連があるからさ。
 聡いお前のことだ。もう察しているだろうが、オススメしたいゲームはこの、スプラトゥーンなんだ。

(スプラトゥーンのBGMがどこからともなく流れ始める)



 このゲームの良いところは、“定期ゲーの戦闘を自分自身が味わえる” という点だ。
 繰り返し述べるが、普段定期ゲーの戦闘で俺たちができるのは、その戦闘でキャラクターがどう立ち回るか、大筋を設定することに限られる。戦闘が始まってしまえば俺たちは限りなく無力だ。全てが終わった後で、出力されたログに目を通すことしかできない。
 ……或いはそこではじめて、お前は愛するキャラクターをロストしてしまったことに気付く。膝から崩れ落ち、自らの無力さを呪うだろう。(一部の定期ゲーには、死がそのままキャラクターの喪失――ロストに繋がるものもある。より緊張感のあるプレイが可能になるぞ)

 しかしスプラトゥーンでは、リアルタイムで行われる戦闘にお前自身が100%関与することが出来る。気付いたら全てが終わってました、ということはない。もちろん、どうしようもない戦力差に打ちひしがれることがあるのは同じだが……。

 ……いまお前は、定期更新ゲームの記事で、スプラトゥーンの話を始めるなんて、何を考えているんだ?と思っただろう。お前の考えていることは手に取るように分かる、ブラウザバックするなら今のうちだ。だがここで踵を返すことによって、お前は新しい視点を得る機会を永久に失うだろう。お前の進歩はここで止まり、二度とその好機は訪れない……。
 だがここで一歩足を踏み出せば、カラフルで刺激的な非日常がお前を待っているかも知れない。お前自身が戦闘画面に躍り出て、縦横無尽の活躍をする日が来るかも知れない――。

 これから俺は、更に踏み込んだスプラトゥーンの話を始めるが、着いてくるか否か、どちらを選択するのもお前の自由だ。






 

・新しい定期更新ゲーム、スプラトゥーンへようこそ。




 流行の発信地、ハイカラスクエアへようこそ。
 いまお前は、生まれたてのイカのように、或いは上京したての田舎者のように、都市の只中で立ち尽くしていることだろう。だが怖がることはない、この街では誰もお前に危害を加えない……。ショップに行っても「お前はまだイカしてない」と門前払いを喰うだけだ。(スプラトゥーンではバトルをしてランクを上げていくことで、買い物できる幅が広がっていく)

 さて、定期更新ゲーム以外に一切の知識を持たないお前の為に、スプラトゥーンとは何なのかを説明しなければなるまい。

 スプラトゥーン(Splatoon)は2015年に任天堂より発売された、wiiU専用のTPSだ。2017年には続編のスプラトゥーン2がNintendo Switchより発売された。この記事では後者――スプラトゥーン2の方を想定して話を進める。

 スプラトゥーンのメインは、可愛らしいイカたちが繰り広げる、4対4での陣取りゲームだ。
 様々なブキ(水鉄砲やバケツ、筆など、水やインクに関係のあるものがブキとしてデザインされている)を片手にインクを撃ち合い、敵を倒し、前線を押し上げ、ルール毎の勝利条件を目指す。そういうハードボイルドなゲームだ。





※実際にはTPSらしからぬカジュアルな世界観で、子どもから大人まで安心して楽しめるデザインとなっている。

 通常のTPSやFPSと異なる点は、やはり何と言っても“インク”の存在だろう。自分たちの撃ったインクは壁や地面に付着するとそのまま“自分たちの陣地”と化す。自分たちのインク上は高速で泳ぐことが出来る(定期ゲーで言うところのAG上昇)し、インクの補充……リロードもできる(SP回復)。お互いの陣地が可視化されるから、戦況が視覚的に把握しやすいのも利点だ。

 ブキも多種多様で、

インクは塗りづらいが相手をキルすることに特化したブキ(定期更新ゲームで言うアタッカー)

塗り能力に特化しスペシャル(一定以上インクを塗ると使えるもので、味方全員にアーマーを付与したり、範囲攻撃をしたりできるぞ)を沢山使えるブキ(バッファー、デバッファー)

高耐久を誇りヘイトを稼ぐ傘系ブキ(タンク)

機動力を活かしてひたすら敵陣をかき回せる筆系ブキ(敏捷極)

後方から必殺の一撃を放つチャージャー(器極アタッカー)

チャージが必要で隙は大きいが圧倒的な制圧力を誇るスピナー(機関銃のようなブキ。魔極アタッカー)


 などがある。どれも定期更新ゲームのロールに置き換えることができるな。

 さて、これらのブキを担いだイカたちが4人で1つのチームになるわけだが、これがどういう風に組まれるのか気になるだろう。
「フタハナでは一生ソロでした」という人も、スプラトゥーンでは「では1人で戦って下さい」とはならないので安心していいぞ。

 最初に与えられた “ワカバシューター” というブキ(インク切れしづらく塗りやすい代わりに射程が短く、正面戦闘には向かないブキ)を携えて、お前は正面のアリーナへと足を踏み入れる――。すると、お前は各種バトルへと参戦できるようになる。(最初はナワバリバトルだけ)

 マッチング画面で似たような実力(勿論例外もある)の8人が集められる。そしてこの8人はブキ種や射程を考慮しつつ、均等に2チームに振り分けられる。(※これはガチマッチというレート戦の話で、よりカジュアルなナワバリバトルでは編成はランダム)

 定期更新ゲームで言うなら、8人の中にバッファーが2人いたらこの2人は別々のチームに配置されるし、前衛が4人いたら2人ずつに分けられる、というわけだ。ソラニワの対人戦に似たようなシステムがあっただろう。あれを想像すればいいと思う。
 ちなみに大乱戦のように固定チームを組む「リーグマッチ」もある。友人たちと通話しながら遊ぶのは最高に楽しいからオススメだ。

 実際のバトルでは、ブキの射程に合わせて前衛・中衛・後衛に何となく分かれ、お互いをカバーしながら戦線を作り戦うことになる。キル能力に秀でる者は敵を倒しに行くし、塗るのが強い者はそれをサポートしたり陣地を広げたりする。後衛は後方の高台に陣取り、盤面を広く睨んだり、前衛がやられた時に戦線が一気に崩壊しないよう時間を稼いだりする。
 また敵に前線を押し込まれ劣勢になった時には、味方それぞれが“スペシャル”という特別なスキルのゲージを溜め、タイミングを合わせて使って状況を打開する、というようなこともある。

 こう言ったスプラトゥーンの戦闘の空気を言葉で伝えようとするのは難しいが、「定期ゲーの戦闘を実際におこなっている」ような感覚に近いものは確かにある。TPSにしては珍しい少人数チーム、各ブキの役割がハッキリしているからそう思うのかも知れない。

 ちなみにヒーラーという役職はスプラトゥーンには存在しない。スプラトゥーンでは被弾したら死ぬのが基本だし、手負いになっても数秒間インクに潜っているだけで全回復できるから、そもそも活躍の機会がないというわけだな。
 死んだとしても10秒もしない内にリスポーン地点で復活することが可能だ。そういう意味では、リスポーン地点こそが「チーム5人目のヒーラー」という見方も出来るかもしれない。

 ここまで聞いたお前は、こう思うだろう。「あれ、それじゃあ全員一生復活するわけだけど、どうなったら決着が付くんだ?」と。

 確かに大抵の定期ゲーの戦闘は、相手の陣営を全滅させる事が勝利条件として設定されている。逆に言えば、どちらかの陣営が全滅するか、一定のターン数が経過するまで戦闘は終わらない。
 それに当て嵌めると、スプラトゥーンでも“敵4人を一度に倒すかタイムアップになる”まで戦いが終わらないということになるが、そうではない。

 次に話すのは、定期更新ゲームとスプラトゥーンの唯一の違いだ。




 

・定期更新ゲームとスプラトゥーンの唯一の違い。




 一見、=で結んでも良さそうなほどに相似している両者……。しかし、その両者には、決定的な違いが1つだけある。
 聡明な諸君ならお気づきだろう。つまり、大半の定期更新ゲームの戦闘は「敵を全滅させる」ことが勝利条件だし、スプラトゥーンはそうではない、という点だ。

 それを聞いてお前は、「え!? スプラトゥーンは敵を全滅させても勝ちにならないのか!?」と驚き、戸惑っていることだろう。
 狼狽える気持ちも分かる。俺たちは敵を全滅させる以外の術を知らない。生まれたときから銃を握りしめ、敵を屠ることだけを考え、実行し、生き延びてきたアウトローなのだから。

 しかし確かに、「スプラトゥーンでは敵を全滅させても勝利条件足り得ない」。敵を全滅(オールダウン、オールキルという)させること自体が勝利への近道となるのは間違いないが……。

 ではどうやって勝利を目指すのか? スプラトゥーンには “オブジェクト” という概念が存在する。オブジェクトというのは、勝利条件に関わるものの事を言う。
 エリア、ヤグラ、ホコ、アサリがそれに当たるが、一度に全部覚えようとしても無理な話なので、今回は “エリア” に限定して話そうと思う。

 スプラトゥーンのバトルルールの1つである、“ガチエリア” では、フィールドの真ん中に “エリア” と呼ばれる空間が存在する。このエリアを自分たちのインクで一定以上染めると、エリア確保状態となり、カウントが進んでいくことになる。
 このカウントを0にする、或いはタイムアップまでに相手より多く進めておくことが勝利条件だ。
 このルールだと、「先に敵を倒すか」「エリアを塗るか」の選択肢が生まれる。敵と交戦している間はエリアの確保に貢献できないが、敵を倒すことができれば暫くの間は人数有利となり、楽にエリアを確保できるだろう。

 また、お互いの陣営がエリアを挟んでにらみ合い、エリアの塗り合いになる、という状況もあるだろう。そうなると、より塗り能力の強い陣営がエリアを確保することになるので、そうでない陣営は塗り合うよりも敵を倒しに行った方がいい……。編成でお互いの戦略が変わってくるのも定期ゲーとの共通項だ。

 また、ワンサイドゲームを防ぐために、ガチエリアでは“エリアを確保されている側”、つまり劣勢側はスペシャルのゲージが自動でチャージされるようになっている。その為、強力なスペシャルを一斉に使うことで勢いをつけ、エリアを奪い返すことができるよう設計されている。
 定期ゲーマーには「○行動毎の強力なスキルが早く撃てるようになる」と言った方が伝わるだろうか。
 逆にエリアを確保されている側はこれを上手く迎え撃ち、返り討ちに出来れば大きくリードを稼ぐことができるというわけだ。

 駆け足になってしまったが、スプラトゥーンの魅力が少しでも伝わっただろうか。じつは前々から思っていたこともあるので、最後にそれを記して幕引きにしたいと思う。







 

・定期更新ゲームでスプラトゥーンを。




 ここまで読んでくれた諸氏は、「やっぱりスプラトゥーンと定期ゲーを結びつけるのは無理あるけど、似たような要素があるらしいことは理解した」と思う。まあ興味があればスプラトゥーンもやって欲しい。定期更新ゲームとは一味違う良さがあるので。逆に何の不幸か、スプラトゥーンゲーマーでこの記事を読んでしまったあなたは、是非定期更新ゲームをやってみて欲しい。

 それともう一つ望みがあるのだが……

 誰か、相手を全滅させる以外に勝利条件のある定期更新ゲーム(の戦闘)を作ってくれ! ということなんだ。純粋な殴り合いもいい……。だが、別の要素が絡む戦闘も楽しそうじゃなイカ?
 ガチエリアなんかは再現しやすいように思う。ガチエリアに一定以上ダメージを与えることで確保できて、確保ターン数を競う……みたいな。フレーバーやバランスはお任せするとして。

「ならお前が作れよ。定期ゲー作れるように勉強しろよ」という怒声が飛んでくることは容易に想像できる……。世の中は他力本願に対して想像以上に厳しい。だが、俺には出来ない。出来ないんだ。

 何故かって?答えは単純にして明快さ。俺は定期ゲーやスプラトゥーンで遊ぶのに忙しいからだ!それ以上でもイカでもねえ!!

 イカだけに!!!


 終わり!!!






提供:NHK
(今年もクソ記事書いてごめんなさい)

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